ニューズレター


2026.Sep vol.142

近隣住民による迷惑行為に対する法的対応


不動産業界:2026.Sep vol.142掲載

当社では、アパートの賃貸を行っています。当社が賃貸しているアパートの近隣住民から、アパートの住民に対する迷惑行為が繰り返されています。

当該近隣住民は、数ヶ月間にわたってアパートの敷地に複数回無断で立ち入り、住民の子供を怒鳴りつけたり、アパートの部屋のインターホンを鳴らしたり、ドアを叩いたりする等、様々な迷惑行為を行っています。

当社としても対応に苦慮しており、警察にも相談しましたが、警察としては、「以前から相談が寄せられている方であり既に警察での対応も試みたが、会話がなかなか成り立たない等、意思疎通が困難な状況にある。仮に被害届を出していただいたとしても、刑事事件として対応することは難しい。」との回答でした。

入居者の安全を守るためにも、警察への相談以外に、当該近隣住民をアパートの敷地に立ち入らせない法的な方法はありますでしょうか。


このような迷惑行為を繰り返す近隣住民に対しては、裁判所に対し立入禁止の仮処分を申し立てる方法と、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下「精神保健福祉法」といいます。)第22条第1項に基づく保護申請を検討するという方法の、2つの対応方法が考えられます。

さらに詳しく

まず、裁判所に対し、暫定的な処分として立入禁止の仮処分を申し立てることが考えられます。この手続が認められるためには、①被保全権利と、②保全の必要性が必要です。

本件において、貴社は、アパートの占有権等を有しており、これらが①被保全権利として認められる可能性があるものと考えられます。

また、当該近隣住民がアパートの敷地内に数ヶ月間にもわたって複数回無断で立ち入り、入居者の子供を怒鳴りつけたり、部屋のドアを叩いたりする等の具体的な被害が生じていることに鑑みれば、アパートの住民への健康被害や賃貸人としての管理上の損害を防ぐため、②保全の必要性も認められる可能性もあるものと考えられます。

したがって、当該近隣住民に対する、敷地内への立入禁止を命じる仮処分が認められる可能性があるものと考えられます。

もっとも、警察とのやりとり等を踏まえますと、当該近隣住民は、意思疎通も困難な状態にあり、自身の言動を制御できていない可能性があるものと考えられます。

そのような本件の状況下では、仮に立入禁止の仮処分が認められたとしても、当該近隣住民の迷惑行為が止まらない可能性も否定できません。

そこで、貴社としては、精神保健福祉法第22条第1項に基づき、措置入院のため、都道府県知事に対する保護の申請を検討することが考えられます。

措置入院とは、行政の命令によって本人や家族の意思にかかわらず、対象者を入院させる制度です。これが認められるためには、①対象者に精神疾患があり、そのために自傷行為や他害行為をしたか、あるいは今後する危険性が極めて高いこと、②都道府県知事に対し、一般市民等からの保護の申請や警察官等からの通報があること、③精神保健指定医2名が診察し、2名が一致して、対象者が精神障害者であり、自傷他害の危険性が高いと判断することが必要です。

各要件を充たすかについては詳細な検討が必要になるところではありますが、被害の程度や当該近隣住民の状況等によっては、これらの要件が充たされると判断される可能性もあるものと考えられます。

また、状況次第ではありますが、都道府県知事への保護の申請をするとともに、警察官に対し、同法第23条に基づく通報(最寄りの保健所長を経た都道府県知事への通報)を行うように促すことも一案と考えられます。

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