ニューズレター


2026.Jul vol.140

迷惑行為を行う近隣住民が存在することの説明義務


不動産業界:2026.Jul vol.140掲載

当社が賃貸しているアパートの入居者から、近隣住民の方(以下「Aさん」といいます。)から嫌がらせを受けているとの相談がありました。

実は、Aさんは、過去にも、他の部屋の入居者に同様の嫌がらせをしており、その入居者はアパートを退去しています。

アパートの入居者から、Aさんのような迷惑行為を行う近隣住民がいることを入居契約時に説明すべきではなかったのかと質問されました。

賃貸人は、迷惑行為を行う近隣住民がいることについて必ず説明しなければならないのでしょうか。


近隣住民が迷惑行為を行っている場合の全てについて、説明義務を負うわけではありませんが、迷惑行為の内容や程度によっては、賃貸借契約を締結する時点で、賃借人となる者に対して、迷惑行為を行う近隣住民の存在を告知しなければならない可能性があります。

さらに詳しく

賃貸人が、宅地建物取引業者である場合には、宅地建物取引業法第35条第1項に基づき、同項各号に重要事項として定められた事項を、契約の相手方(賃貸借契約では、賃借人となる者)に説明しなければならないものとされています。

今回の相談では、契約の対象となる賃貸物件の近隣に、迷惑行為を行う住民がいるという事情が問題となっていますが、同法第35条第1項各号には、迷惑行為を行う近隣住民の存在については、説明すべき事項として規定されていません。

しかしながら、重要事項説明の対象事項に当たらないとしても、賃貸人が説明義務を負わないとは限らず、裁判例上、賃貸人になろうとする者は、賃借人になろうとする者が当該物件を賃借するか否かを判断する上で重要な考慮要素であって、賃貸人になろうとする者が知っていたか、又は容易に知ることができた事実については、賃借人になろうとする者に対し説明・告知すべき義務を負うとされています。

今回の相談では、賃貸物件の近隣に迷惑行為を行う住民が存在し、過去には、当該近隣住民の迷惑行為が原因で賃貸物件を退去した入居者もいるという状況です。

このような状況における説明義務について、売買に関する事案ではありますが、売主が、買主に対し、①物件の近隣に居住する人物が、物件の前所有者に対し、物件に引っ越した翌日に『子供がうるさい。黙らせろ。』と苦情を言ったこと、②子供がうるさいと怒って、洗濯物に水をかけたり、泥を投げたりしていたこと、③前所有者が、当該隣人の行動について自治会長や警察に相談していたこと等の各事情を説明しなかったことは、売主として求められる説明義務に違反するものであると判断された裁判例があります(大阪高判平成16年12月2日判決)。

今回の相談では、Aさんの迷惑行為の内容が明らかではありませんが、先述の裁判例を踏まえると、近隣住民が、執拗に理不尽な苦情を言ってきたり、所有物を汚損させるような行為をしてきたりする場合には、そのような行為をする近隣住民がいるという事実は、「賃貸物件を賃借するか否かを判断する上で重要な考慮要素となる事実」に当たり、その事実を説明しなかったことは、賃貸人に求められる説明義務に違反すると判断される可能性があります。

以上のように、近隣住民が迷惑行為を行っている場合の全てについて説明義務を負うわけではなく、ケースバイケースの判断となります。

もっとも、このような説明義務違反が認められる場合、賃借人に対して損害賠償責任を負う可能性もあるため、迷惑行為を行う近隣住民がいる場合には、そのような近隣住民の存在を説明すべきか否かについて、十分注意する必要があります。

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