ニューズレター


2012.May Vol.1

暴力団排除条例施行後の動向及び条例のポイント


2012.5.vol.1掲載

Ⅰ.都道府県における暴力団排除条例の制定

平成22年4月1日に福岡県で制定されたことを皮切りに、全国で暴力団排除条例が制定され、平成23年10月1日に東京都及び沖縄県で制定されたのを最後に、全国の都道府県において、暴力団排除条例の制定が完了しました。なんと、皮切りとなった福岡県では、平成24年2月1日に既に改正まで行っています。都道府県における暴力団排除条例の制定は完了しましたが、各都道府県において規制の内容はそれぞれ異なります。

例えば、福岡県や東京都では、事業者に対しても罰則が定められていますが、神奈川県のように事業者に対する罰則がない条例もあります。また、福岡県や京都府のように一部の地域を指定して厳格に取り締まっている都道府県もあります。これらの条例内容の相違点は、都道府県ごとに地域の特徴を踏まえて、規制内容を定めていることから生じていると考えられます。

Ⅱ.暴力団排除条例の実施に向けた具体的な対応への動き

東京都内では、平成24年3月29日、都内に存する4つの中小企業団体が警視庁などと連携し暴力団排除対策に取り組むための連絡協議会を発足しました。連絡協議会には、警視庁のほか弁護士も含まれており、その目的は、東京都の暴力団排除条例を周知し、暴力団排除を促進することや、不当要求への対応などです。このように、関係各所が暴力団排除の対策を行っていることをみると、暴力団排除条例への関心が高まっていることを示しているように思います。

Ⅲ.暴力団排除条例の内容について

i.

そこで、本ニューズレターでも東京都における暴力団排除条例を例にとって、事業者が気を付けておくべき点を、いくつか抜粋して見ていきたいと思います。

まずは、事業者全体が契約締結時に適用される定めについてです。東京都暴力団排除条例第18条は、事業者が契約を締結する際は、①契約の相手方等が暴力団関係者でないことを確認すること、②契約書において、契約の相手方等が暴力団関係者であることが判明した場合は、契約を解除できる旨定めることを、事業者の努力義務としています。この定めは努力義務とされていますが、各企業が暴力団との関与をなくすためには必要な取り組みになると考えられます。

ii.

次に、不動産の譲渡、貸付け(以下「譲渡等」といいます。)に適用される定めです。東京都暴力団排除条例19条は、不動産の譲渡等の契約をする際に、①契約の相手方に対し、暴力団事務所として利用するものではないことを確認すること、②契約書において、当該不動産が暴力団事務所として利用されていることが判明した場合は、契約を無催告で解除又は買い戻すことができる旨定めることを、不動産の譲渡等をする者の努力義務としています。これらの規定は、都内の不動産が暴力団事務所として利用されることを排除することを促すことを目的としており、不動産を取り扱っている事業者にとって無視できない定めといえます。

iii.

最後に、最も重要な東京都暴力団排除条例24条が定める利益供与等の禁止です。まず、事業者が、その行う事業に関し、暴力団員等が暴力的不法行為等を行うこと又は行ったことの対償として利益供与を行うことを禁止しています。次に、事業者が、その行う事業に関し、暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することになることの情を知って、暴力団員等に対して、利益供与を行うことを禁止しています。例外として、法令上の義務又は情を知らないでした契約に係る債務の履行としてする場合その他正当な理由がある場合のみ除かれています。前者に関しては、暴力団排除条例の有無に関わらず不適切な行為であり、禁止されることに違和感はあまりないと思われます。しかしながら、後者については、相手方が暴力団等であることを知っていた場合、通常の取引を行うことについても規制の対象としているため、たとえビジネスであったとしても、暴力団等とは関与しないことが求められています。

iv.

以上のような定めがありますが、条例に違反したとしても必ずしも制裁があるわけではありません。東京都暴力団排除条例が用意している主な措置は、勧告、公表、防止命令、罰則の4種類です。まず、利益供与の禁止に違反した場合、勧告が行われる可能性があります。さらに、勧告を受けたにもかかわらず、1年以内に再度利益供与の禁止に違反した場合、公表されるおそれがあります。加えて、利益供与の中でも、暴力的不法行為等や暴力団の威力を示して行う行為を行うこと又は行ったことの対償としての利益供与の禁止に違反し、公表された者が1年以内にさらに違反行為を行った場合は、東京都から防止命令が行われ、当該防止命令に違反した場合には、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処されるという、罰則まで用意されています。

v.

東京都の暴力団排除条例を例にとって事業者が注意すべき点を挙げてみましたが、都道府県ごとに特徴があり、制裁の方法も様々です。今回指摘させていただいた点が、暴力団排除条例のポイントとして各都道府県においても共通していることが多いので、事業者として気を付けなければいけないポイントを押さえて、都道府県ごとに対応していくことが大切です。

アーカイブ

ALG&Associates
Lawyers

弁護士法人ALGの所属弁護士紹介になります。

所属弁護士一覧