ニューズレター


2016.Dec Vol.25

水道料金や電気料金の消滅時効


不動産業界:2016.12.vol.25掲載

私のアパートは、水道メーターの構造上、大家の私が建物全体の水道供給契約を締結して水道料金を払ったうえで、それぞれの借主からは、私が検針した水道使用量に応じて、毎月「水道代」として回収する契約にしているの。
ところが、201号室のAさんは、長らく私に水道代を払ってくれなくて…。私が水道料金を支払っているから水道が止まらないことを良いことに、もう3年も水道代を滞納しているので、この前、意を決して、Aさんに、滞納している水道代の全額を支払うように、強めの口調でお願いしたら、Aさんから「水道料金は2年で時効だから、2年より前の滞納分は払う義務はない」って言われたの…。そんな早くに時効が成立するなんて聞いたことないし、払いたくないから適当に反論しているだけよね?


水道料金は、2年で消滅時効が成立するものと考えられます。もっとも、本件の状況でオーナー様が請求する「水道代」については、それをAさんに請求することが可能になったときから5年が経過しなければ、消滅時効は成立しないものと考えられます。

さらに詳しく

1 水道料金の時効消滅期間

水道は、主に自治体が運営する水道局が供給するものですが、水道料金は、水道局と個々の水道利用者との間で直接締結される水道供給契約に基づき支払われるものであるため、当該水道料金債権については、民法等が定める消滅時効に関する規定が適用されます。

そして、裁判例において、「水道供給契約によって供給される水は、民法173条1号所定の『生産者、卸売商人及び小売商人が売却したる産物及び商品』に含まれる」と判断されており、当該水の供給の対価である水道料金は、2年間の短期消滅時効にかかるものと判断されています(東京高裁平成13年5月22日判決)。

そのため、今回のAさんの主張のうち、水道料金が2年の消滅時効にかかる、という部分については、法的には間違っていないということになります。なお、古い判例にはなるものの、電気料金についても同様の判断が下されています(大審院昭和12年6月29日判決)。

2 立替払いをした場合の消滅時効の起算点と時効期間

もっとも、本件においてオーナー様が請求をしているのは、入居者が直接水道供給契約にもとづいて水道局に支払うべき水道料金ではなく、賃貸借契約に定められている「水道代」という名称の「水道使用量に応じて各月請求できる金銭」ということです。

この場合、水道代とは、水道料金債権そのものではなく、オーナー様とAさんとの間の賃貸借契約上の金銭債権の一つであると考えられ、上記「生産者、卸売商人及び小売商人が売却したる産物及び商品」の代金についての短期消滅時効の規定は適用されないものと考えられます。そして、水道代のように、毎月定期的に発生する金銭債権の消滅時効成立のための期間は、民法上、請求可能になったときから5年と定められているので、現時点において最長でも3年分の滞納しか生じていない水道代については、消滅時効が完成していないと考えられます。

3 債権法改正

ちなみに、現在、国会に提出されている民法改正案においては、時効についての規定が大幅に改正され、上記の水道料金の消滅時効の根拠となっている、特定の業種が取得する債権についての短期消滅時効の規定(民法170~174条)が削除され、消滅時効については、原則として「債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき」か「権利を行使することができる時から10年間行使しないとき」に成立する内容に統一されるということです。

そのため、当該改正案での民法が施行された場合には、そもそもとして、上記Aさんの反論は成立しなくなると考えられます。


本件のように、水道や電気料金が2年で消滅時効にかかるということと、借主に対して料金分の金銭を請求できるかということは、法律的には全く別の問題になっていることもあります。
請求可能な請求を断念してしまわないように、時効等、法律問題が登場する場合には、是非我々弁護士にご相談ください。

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