ニューズレター


2023.Jul vol.104

隣地から越境した樹木の枝の切除に関する法改正


不動産業界:2023.Jul vol.104掲載

私は自分の土地にマンションを建てて賃貸しているのですが、マンションに隣接している空地から樹木の枝が伸びてきて、マンションの敷地内に入り込んでいます。そのせいで、落ち葉や虫、鳥の糞などによる被害が発生しており、賃借人からも何とかならないかと苦情が来てしまいました。

本当は、樹木の所有者に連絡して越境している枝を切ってもらうのがいいのだと思いますが、空地を誰が所有しているのか知っている人がおらず、樹木の所有者の調べ方も分かりません。

このような場合、越境している部分の枝を勝手に切ってもいいのでしょうか。


令和5年4月1日付で施行された改正民法にて、隣地の樹木の所有者を知ることができないときには、土地の所有者(マンションの敷地の所有者)は、越境部分の枝を切り取ることができることになりました(改正民法233条3項2号)。

本件でも、調査を尽くしても樹木の所有者が判明しないときは、自分で越境部分の枝を切除することができるものと考えられます。

さらに詳しく

1.改正の経緯

令和5年4月1日付で施行された改正民法により、越境した竹木の枝の切除に関する民法のルールが見直されました。

従来の民法では、隣地に生えている樹木の枝が自分の土地に越境した場合には、これを自分で切ることはできず、樹木の所有者に枝を切除してもらう必要がありました。

ただ、樹木の所有者が協力的でない場合には、わざわざ訴えを提起して切除を命ずる判決を得て、強制執行の手続をとるしかなく、これでは手間がかかりすぎて現実的ではないという問題がありました。また、本件のように、そもそも樹木の所有者が分からない場合には裁判をすることも難しく、どうすることも出来ないという不都合がありました。

このような経緯から、越境した枝の切除を容易にするために民法が見直されました。以下、詳しく説明します。

2.土地の所有者が自分で越境部分の枝を切り取ることができる場合

①改正民法233条3項1号

竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないときは、相当の期間経過後に、土地の所有者が自分で越境部分の枝を切ることができます。所有者が分かっている場合には、この方法が適切です。

「相当の期間」は、竹木の所有者が枝を切るのに必要な猶予期間を与えるものであり、基本的には2週間程度であると考えられます。

なお、竹木が共有物である場合には、原則として共有者全員に催告する必要があります。もっとも、一部の共有者が不明な場合には、当該共有者との関係では下記の②の場合に該当するため、催告は不要と考えられています。

②改正民法233条3項2号

竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、土地の所有者が自分で越境部分の枝を切ることができます。

竹木の所有者の調査方法の例としては、現地調査、土地登記簿・立木登記簿・戸籍・住民票等の公的記録の確認といったものが考えられます。求められる調査の程度については、民法が改正されて間もないこともあり、明確な基準はありませんが、単に近隣の人に聞き取りをするだけではなく、公的に入手可能な資料を入手した上で、連絡を試みることは必要でしょう。

③改正民法233条3項3号

急迫の事情があるときは、土地の所有者が自分で越境部分の枝を切ることができます。

例えば、台風によって枝が折れそうな場合や、地震や地盤沈下等によって樹木が倒れそうな場合で、枝の落下や樹木の倒壊により隣地の建物等を毀損するおそれがあるとき等が、この場合に当たるものと考えられます。

3.竹木の共有者各自による枝の切除

この度の民法改正により、竹木が共有されている場合のルールも見直されています。

従来は、竹木の枝の切除は共有物の変更(民法251条)に当たるため、竹木の共有者が枝を切除する際には共有者全員の同意が必要と考えられていました。

もっとも、これでは竹木の円滑な管理を阻害すると考えられたため、竹木が共有物である場合には、各共有者が単独で越境している枝を切り取ることができるものとされました(改正民法233条2項)。これにより、土地の所有者は、共有者の一人から承諾を得れば越境部分の枝を切り取ることができるようになりました。

4.樹木の根が越境している場合

ここまでは樹木の枝についての説明でしたが、根については、「隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。」(改正民法233条4項)とのみ規定されており、従来から変更はありません。

そのため、根が越境したときは、土地の所有者は特別な手続を経ることなく、その根を自分で切り取ることができます。

土地の所有者が自分で越境した枝を切り取る際には、必要な範囲内であれば隣地に入ることができます(改正民法209条1項3号)。

また、枝を切り取る場合の費用については、枝が越境して土地所有権を侵害していることや、土地所有者が枝を切り取ることにより竹木の所有者が本来負っている枝の切除義務を免れることを踏まえ、基本的には、竹木の所有者に請求できると考えられています(民法703条、709条)。

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